「御馳走様に込められた想い」
先日ふと目にしたSNSの記事で普段からあたり前に使っている「お御馳走様でした。」という食後の挨拶が北部九州の方言だと知って唖然としました。「御馳走様」という言葉にはすでに「御」という敬意を表す接頭語がついているため、その前に「お」がつくと二重敬語となり日本語として間違っているとのことでした。なるほどと思ったことと同時「御馳走様」と漢字で表すのはどうしてなのかと疑問に思い、今回は「御馳走様」という挨拶について調べてみました。
御馳走様の「馳走」とは「馬で走りまわる」という意味であり、食材を簡単に手に入れられなかった時代に大切な客人を美味しい食事でもてなすために馬を走らせ食材集めに奔走した様子を表しています。そのような大変な思いをして食事の準備をしてくれた人に対しての感謝と敬意を込めて「馳走」に「御」と「様」が付き、食事を終えた後に「御馳走様」と挨拶するようになったと言われています。更にその奔走した様子から「馳走」と言う言葉に「心をこめたもてなし」や「おいしい食事を用意すること」の意味が含まれるようになりました。
また、食卓に御馳走が並ぶまでには、お米や野菜を作ってくれた人、魚を獲ってくれた人、それらを運び、調理してくれた人などそのすべての工程に多くの人の時間と労力がかかっています。それらのあらゆる人への「目に見えない努力」に対して感謝と敬意が込められた言葉が「御馳走様」であり、「命をくれた食材」への感謝の言葉でもあるとありました。特に日本では、「食材にも命がある」という考え方が根付いています。魚や肉、野菜に対しても、「頂きます」で命を頂戴し、「御馳走様」でその命を無駄にせず、大切にいただいたことを伝えます。
「御馳走様」は本来の意味と使い方が異なるため、他のどの国の言葉にもピタリと意味を同じくする言葉はなく、外国語で直訳することはできないそうです。四季折々にさまざまな恵みをくれる自然が日本人の精神風土を豊かにし、昔から自然に寄り添い、深く関わってきた日本人ならではの気持ちの込め方が「御馳走様」という言葉で表現されていました。
普段何気なく使っている「御馳走様」の意味をきちんと理解して挨拶することで、その食事は感謝の場に変わります。食事を頂く時はその一皿にかけられた手間を思って御馳走様の挨拶をしたいものですね。
足のナースステーション真こころ 永渕 智子
監修:足のナースステーショングループ






